日本財団 図書館


 

(注)本モデル交換協定書第4章(有効性および強制可能性)は、第4.1条(有効性)、第4.2条(証拠)、第4.3条(契約の成立)から構成されている。
(2)隔地者に対する意思表示と対話者間の意思表示
ここで言う「隔地者」という用語は、対話者に対するもので、空間的に土地を隔てるという意味でなく、意思表示がなされてから了知されうる状態を生ずるまでに、取引上考慮するにあたいする多少の時間を要する関係にある者を意味する。隔地者に対する意思表示は到達によって効力を生ずるのが原則である。多くの国では、隔地者に対する意思表示の効力発生については到達主義をとっている。意思表示が相手方に到達してはじめてその存在を知ることができるからである。例えば、わが国の民法は、「隔地者に対する意思表示はその通知の相手方に到達したる時よりその効力を生ずる」(民法第97条)と規定している。
隔地者に対して、「対話者」という用語は、意思表示が了知されうる状態を生ずるまでに取引上問題となるべき時間を要しない関係にある者を意味する。対座者間や電話による意思表示は、対話者間における意思表示であり、その効力は通常即時的に生ずる。対話者間の意思表示の効力発生について、口頭による意思表示が発声(発信)されたときか、それとも相手方がこれを聴取(受信)したときかを区別するのはあまり意味がないかもしれない。対話者間では、どちらをとっても効力発生は即時的である。しかし、対座する当事者間で商談が行われているとき、たまたま自動車等の騒音により会話が明瞭に聞き取れず、しかも聞き漏らした事柄について何らかの責任を負うという場合を想定すると、対話者間における意思表示は、これが発せられた時でなく、少なくとも相手方に到達した時に効力を生ずると考えるのが合理的である。わが国の民法には明文の規定はないが、対話者間の意思表示について、隔地者に対する意思表示の場合と同様に、到達主義が類推される。
(3)申込と承諾の効力発生
イ.申込の効力発生
申込の意思表示については、これが隔地者に対するものでも、また対話者間のものでも、相手方(被申込者)に到達した時にその効力が生ずるという、到達主義がとられている。換言すれば、申込は、郵便、電信、電話、テレックス等、いずれの通信手段によってなされても、これが相手方に到達した時にその効力が生ずるものとみなされている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION